拙著『皇帝の財務諸表 ― 歴史の興亡をキャッシュフローで解く』の無料キャンペーンは、今日9月23日までです。告知はこれで3回目、そして最後になります。
1回目の記事では全10章をひととおり開き、2回目は「農学出身の人間が財務の本を書くとどうなるか」という縦糸1本で通しました。その2本で、実は一度も本文を開いていない章が2つあります。第3章の唐と、第6章の地理です。今回はそこだけを書きました。
唐の均田制と租庸調を、税制ではなくサブスクリプションの課金設計として読みます。国家が土地というプラットフォームを貸し出し、利用料として租(年間2石の穀物)・庸(年間20日の労役、絹や布で代替決済可)・調(その土地の特産の布)を取る。収穫高に連動しない完全な定額制です。増産した分はまるごと農民の利益になるのでインセンティブ設計として優れ、収入査定が不要なので統治コストも安い。7世紀にこの設計へ到達していたのは、世界的に見てもかなり先進的でした。
面白いのは、崩れ方のほうです。平和が続いて人口が増えると、1人あたりに配れる土地が減ります。提供する価値は減ったのに、会費は一律1人前のまま据え置かれた。1万円の価値を生む土地に2,000円の利用料なら納得できますが、土地の価値が500円に落ちても2,000円を請求されれば、耕すほど赤字になります。合理的な行動は1つ、解約です。農民は戸籍から消え、課税ベースそのものが蒸発しました。
サブスクリプション企業を見るとき、私たちはARPU(1契約あたりの単価)を見ます。唐が教えているのは、その逆です。単価が維持されていても、裏側で提供価値が目減りしていれば解約は必ず起きる。そして数字に出るのは、いちばん最後です。
note記事では、このほかに第6章「地理と利益」を扱っています。
- 唐が両税法へ切り替えた意味 ― 人を数える定額課金から、資産に応じた従量課金へ
- 河西回廊は、世界最大の通商路の「レジ」の前に座る行為。自分では何も作らずに手数料を抜ける場所
- 関中=関所を閉じるだけで守れる金庫室。防衛の固定費が構造的に安い土地
- 蜀(四川盆地)=参入障壁が高すぎて成長しないクローズド・マーケット。三国志の蜀が天下を取れなかったのは人ではなく立地の問題
- 中原=売上は大きいが防衛費が青天井になるレッドオーシャン
- 大運河=生産拠点(南)と管理拠点(北)をつなぐ単一経路の動脈。詰まれば即ショート
- 第1章の読み替え ― 領土拡大は、売上を増やすM&Aであると同時に、維持コストという負債を背負う行為
続きは、noteの記事でお読みください。
過去2回の記事もあわせてどうぞ。
▶ 第1弾「140年かけて貯めた現金を、六代目が一代で溶かしました」
▶ 第2弾「万里の長城は、年間降水量400ミリの線の上を走っています」
なお、Kindleの無料キャンペーンは米国太平洋時間で管理されているため、終了は日本時間の24日昼過ぎまでずれ込む計算ですが、あてにせず今日のうちに取っていただくのが安全です。本書は特定の銘柄の購入を勧めるものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

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