■ はじめに
佐賀大学名誉教授の和田です。
現在、日本社会を覆っている「円安容認」の空気には、極めて深刻な構造的欠陥が隠されています。円安は、表面的な利益で痛みを和らげる一方で、根本的な病を進行させる「麻薬」に他なりません。
■ 延命治療が奪う「生産性向上」の機会
円安による延命は、本来淘汰されるべき低効率な企業を温存させてしまいます。 輸出企業は為替差益という「人工呼吸器」で生き延びていますが、その代償として以下の3つの危機を招いています。
1. 生産性向上の機会喪失:効率化への投資を怠り、先進国最低水準に甘んじている。
2.資源の非効率な配分:成長産業へ行くべき人材や資金が衰退産業に固定されている。
3.依存性からの脱却不能:もはや適正レートでは生存できない「中毒状態」にある。
■ 「デジタル鎖国」という致命的な副作用
最も深刻なのは、AI革命時代における「デジタル鎖国」です。円安は物理的な壁ではなく、コストという壁で日本の学びを阻害しています。
*ハードウェアの障壁:GPU価格は2020年比で約2.5倍に高騰。
*クラウドの負担:ドル建て利用料は実質3倍近いコストとなり、スタートアップの競争力を削いでいる。
*知見の遮断:海外派遣や研修の激減により、日本の技術者は世界標準から取り残されている。
■ 課金なくしてAIの理解なし
生成AIの本質を理解するには、膨大な「試行錯誤(壁打ち)」と、それに伴う「課金」が不可欠です。 無料ツールに安住していては、真の知見は得られません。
多額の課金をしてこそツールの長短が見えてくるものですが、円安がそのアクセスの障壁となっているのです。
■ おわりに:今こそ「開国」の決断を
この負のスパイラルを断ち切るには、適正な為替レートへの是正と、特定分野への大胆な集中投資が必要です。 「麻薬」を断つ勇気こそが、デジタル鎖国を終わらせ、日本の未来を切り拓く唯一の道です。

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